WSETとCOURT OF MASTER SOMMELIERの違いを簡単に説明します

2024年8月21日

WSETとCourt of Master Sommeliersの違いとは?

ワイン業界でのキャリアを考えている方や、ワインの知識を深めたいとお考えの方は、Wine & Spirit Education Trust(WSET)とCourt of Master Sommeliers(CMS)について聞いたことがあるかもしれません。これらはどちらも世界的に高く評価されている教育プログラムで、それぞれ異なる目的で設計されています。以下に、WSETとCMSワイン教育の主な違いを記載いたしましたので、自分に合った道を選ぶ際の参考にしていただければと思います。

焦点: 理論 vs サービス

WSETとCourt of Master Sommeliersの最も大きな違いの一つは、カリキュラムの焦点です。WSETはワイン理論に特化しており、ブドウ品種、ワイン産地、醸造技術、ワインのスタイルや品質に影響を与える要因など、幅広いトピックを深く掘り下げます。これは、ワインに関する理論的な基礎知識を身につけたい方に最適で、ワイン科学や地理などの理論的な学習に適しています。

一方、Court of Master Sommeliersは、高級ダイニング環境で必要とされる実践的なスキルに重点を置いています。ワインサービス、料理とワインのペアリング、ブラインドテイスティングの技術が含まれ、ソムリエとしてのキャリアを目指している方に最適です。ここでは、ワインの知識や理論だけでなく、卓越したダイニング体験を提供するためのスキルが求められ、ワインリストの管理、デカンタージュ、料理とワインのペアリングの提案方法について学びます。

認定のレベル

WSETとCourt of Master Sommeliersは、知識やスキルが向上するにつれて進級できる一連のレベルを提供していますが、その構造や焦点は異なります。WSETは4つのレベルの認定を提供しており、初心者に最適なレベル1から、Master of Wine(MW)への道を開く上級のレベル4ディプロマまであります。WSETの進級は主に学問的で、理論とテイスティングの試験を通じて包括的なワインの理解を深めることに焦点を当てています。

Court of Master Sommeliersも4つのレベルを提供していますが、進級するにつれて、より実践的なスキルに重点が置かれます。最初のレベルであるIntroductory Sommelier Courseでは、ワインサービスと理論の基本をカバーします。次に、Certified Sommelier Examでは、理論、テイスティング、サービスの試験が行われます。その後、難関のAdvanced Sommelier Certificateに進み、最終的には名誉あるMaster Sommelier Diplomaを目指します。MSディプロマは非常に難易度が高く、合格率は10%未満という厳しい試験です。

試験形式: 理論と実践

試験に関しても、WSETとCourt of Master Sommeliersは異なるアプローチを取っています。WSETの試験は通常、選択式問題、短い記述式の回答、およびテイスティングの評価を含みます。試験は、理論的な知識とワインを正確に表現する能力を評価することに焦点を当てています。レベルが上がるにつれて、試験は難しくなり、レベル3や4では詳細かつ論理的なエッセイやテイスティングコメントが求められます。

一方、Court of Master Sommeliersの試験は、特に上級レベルでは、実践的なスキルに重点が置かれています。入門レベルでは筆記試験が含まれますが、重要視されるのがサービスとテイスティングの要素です。Certified Sommelier Examでは、ボトルのデカンタージュや特定の料理に合うワインの推薦など、サービスを行う必要があります。ブラインドテイスティングは特に難易度が高く、ブドウの品種、産地、ヴィンテージを答える必要があります。最終的なMaster Sommelier試験では、6種のワインの的確なブラインドテイスティングと、サービス場面での複雑なワインのシナリオを圧力下で処理する能力を試すサービス試験が含まれます。

キャリア: 教育 vs サービス

WSETとCourt of Master Sommeliersが提供するキャリアパスにも重要な違いがあります。WSETは、ワインバイヤー、教育者、ジャーナリストなど、ワイン業界に進出しようとする方に選ばれる傾向があります。理論と詳細なワイン知識に重点を置いているため、ワイン醸造・栽培や産地に対する深い理解が必要な職種に興味がある方に適しています。多くのWSET修了生は、ワインマーケティング、貿易、さらにはワイン醸造の分野で働くことが多いです。特にWSETディプロマは、ワイン業界で非常に評価が高く、高いレベルのポジションの要件となることもあります。

一方、Court of Master Sommeliersは、特に高級レストランで働きたいと考えている方を対象としています。ミシュラン星付きレストランのソムリエになりたい、またそのようなワインプログラムを管理したいと考えている方には、CMSの受講が適しています。CMSプログラムを通じて習得するサービススキルは卓越しており、MSの称号はワインの世界で最も権威あるものの一つです。このレベルに達したソムリエは、ワインディレクターやコンサルタント、または自分のレストランを開くこともあります。

結論: どちらの道があなたに最適か?

WSETとCourt of Master Sommeliersのどちらを選ぶかは、各々のキャリアプランや個人の気質、興味に左右されます。ワインの理論に情熱を持ち、ワイン醸造や産地の複雑な仕組みを探求したい方には、WSETが最適な体系的でロジカルな教育を提供します。一方、ワインサービスの芸術に魅了され、飲食業界でのキャリアを築きたい方には、Court of Master Sommeliersが実践的なスキルを提供します。
また、両認定の焦点が異なるため、多くの方が両方を受講し、WSETコースで得た主に理論的な知識を、マスターソムリエプログラムのより実践的な知識と統合しています。

両プログラムとも世界的に評価が高く、どちらの道を選んでも、ワインエキスパートになるための重要な一歩を踏み出すことができます。

著者紹介

Ettore Donadeo(エットレ・ドナデオ)

Ettore Donadeo(エットレ・ドナデオ)

アンコナ、マルケ州、イタリア生まれイタリア育ち。使用言語はイタリア語・英語・フランス語・関西弁。イタリアの大学で日本語学科を専攻。大学時代に1年間日本に交換留学した際に日本文化に魅せられ、卒業後2008年に再来日。日本とイタリアをつなぐ仕事がしたいと思い、ワイン業界へ転身。WSET Level2からワインの勉強を始め2017年にDiplomaを取得。2017年までワイン専門の酒屋で経験を積み、その後キャプランワインアカデミーに入社。

お電話でのお問い合わせ

9:30~18:00(土日祝日を除く)