株式会社オリエントコーポレーション

株式会社オリエントコーポレーション
人事・総務グループ 人事部 ダイバーシティ推進室 室長
白倉 里美 様


LGBTへの全社員の理解醸成を目的に、経営層から研修を実施

 

クレジットカードをはじめとする各種金融商品・サービスを提供する株式会社オリエントコーポレーション。かねてから女性活躍や障がい者雇用に関する取り組みが行われ2016年にはダイバーシティ推進室を設置し、その活動の一環として、LGBT※1への理解を深めるための研修を2回にわたって実施されました。キャプランでは、講師および研修内容の提案、実施にとどまることなく、さまざまなLGBT関連施策を支援しました。

今回は、ダイバーシティ推進室 室長の白倉 里美 様に、LGBTをテーマに取り上げた理由から実施後の波及効果までを伺いました。

研修導入の背景

ダイバーシティ推進の中で未着手だったLGBT研修を導入

私は当社のダイバーシティ推進室の設立メンバーとして、4年間、ダイバーシティに関する取り組みや制度設計・整備などを行ってきました。そのなかで、LGBTに関しては理解を深めるべきテーマだと認識していたのですが、どのように進めていくべきか模索していました。

一方で、2018年、「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例第5条」の規定に基づき、間もなく「東京都性自認及び性的指向に関する基本計画」が策定されると言われはじめ、時代が大きく変わろうとしていました。

 

ダイバーシティ推進室立ち上げ時は、室長として唯一の女性だったため、マイノリティであることを感じたと語る白倉様

法的整備の流れに後押しされたのも事実ですが、社内を見ても男性か女性かという「男女二元論」や「男女間」のみを想定とした会話や議論が日常的に行われている現実を目の当たりにして、安心・安全な職場づくりを目指す立場としても一個人としても、とても違和感を抱いていました。そこで、LGBTを含めたダイバーシティへの理解を社員や経営層へ広く浸透させることが、優秀な人材の採用や定着に向けた取り組みへの近道と考え、同年11月、最初の研修を実施することにしました。

検討プロセス

キャプランを利用した企業から評判を聞いて依頼

 

「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」にご興味があると語る白倉様

当時、当社を含め、ダイバーシティ推進を行う企業が増え、担当者同士で定期的に情報交換をしていました。そこでLGBT施策や研修についてヒアリングをしたところ、すでにキャプランに依頼して経営層向けのLGBT研修を実施した企業の方から「とても有意義だった」とお聞きしたので、紹介していただきました。提案いただいた研修内容が経営層向けの研修として申し分なかったことや、他部署でキャプランにビジネスマナーなどの研修を依頼していたこともあり、実施に向け準備に取りかかりました。

ダイバーシティ推進におけるビジョン浸透のため、経営層から研修を

当社では「すべての社員が互いを認め、尊重しあい、一人ひとりが、持続的に活躍・成長できる企業風土と働く環境の確立をめざします。」とダイバーシティ推進のビジョンを掲げていますので、まずは経営層から実施すべきと考えました。

LGBTというテーマで研修を行うのは初めてでしたし、経営層を対象とした大規模な研修を実施した経験がなかったので、どういう内容で構成すべきなのか正解もわかりませんでした。そこで、キャプランの担当者と頻繁に打ち合わせを設け、相談しながら研修内容を詰めていきました。当社の経営層には、社会には多様な人がいて、その人たちを受け入れるとはどういうことかを理解してほしかったですし、加えて、LGBTの方に向けたビジネス面での傾向なども知ってほしかったため、その辺りの内容を入れてプログラムを組んでもらうことにしました。

実施した研修内容

そしていよいよ、2018年11月に、会長、社長、本社の部長・室長、グループ会社の社長を対象に第1回目の研修を実施しました。
研修には2名の講師を招いて、まず初めに一人目の講師からダイバーシティ全般の話をしてもらい、少しずつLGBTの話題に移っていきました。そこでは「13人にひとりはLGBTの方がいらっしゃいます。皆さんの部下を13で割ってみてください」と、自身の身近にいることが当たり前であるということも伝えてもらいました。

 

LGBT研修の実際の風景

その次に、私が「この人しかいない」と以前から考えていたメインの講師にバトンタッチ。この講師自身がLGBTの当事者で、ご自身の体験談を交えながら軽やかにライフヒストリーを語ってくれました。他に、企業におけるLGBT施策事例や訴訟事例、炎上事例などにも触れてもらいました。

2回目の研修は、翌2019年の3月に全国の支店長を対象に実施しました。1回目とは異なる講師に依頼したため、1回目の研修を受けた経営層数人が再度話を聞きたいと参加していました。どちらの研修も参加者が多く、100人以上が集まり大盛況のうちに終わりました。

成果と今後に向けて

前のめりになって話を聞くほど、満足度が高かった

1回目、2回目とも、私は参加者の表情が見えるところに座っていたのですが、どの参加者も真剣なまなざしで前のめりになって話を聞いていたのが印象的でした。正直、どうなるのだろうと不安だったのですが、講師の人となりや話の内容が響いたのだと思います。

1回目の途中、参加していた会長や社長に対して講師から「あなたは男性ですか?女性ですか?どうして男性だと思うのですか?」と、あえて質問するシーンがありました。社内の者はさすがにああいう風にダイレクトには聞けないので、ヒヤッとしました。けれども、質問を向けられた会長や社長をはじめ、多くの経営層にとっても考えるきっかけとなったと思います。

また、1回目の研修参加者に社内でつくった「LGBT ALLY(アライ)※2」ステッカーを「見えるところに貼ってください」と言って配ったのですが、研修終了後すぐに多くの参加者が携帯電話や手帳などに貼っていました。後から「いままであんな楽しい研修は受けたことがなかった」「すごく良かった」などと感想を言われるほど満足度が高い研修となりました。

私自身は、それまで外部のLGBTに関する研修を受講した経験があり、知識もあると自負していたのですが、もっと深掘りして学ばないといけないという気持ちになりました。

 

LGBT ALLY ステッカー

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さまざまな施策を実施、研修を形骸化させなかった

さまざまな施策を実施、研修を形骸化させなかった

研修とほぼ同時期にそれ以外のLGBT施策も実施しました。研修実施前に、当社の家族カード※3の対象を戸籍上の家族だけでなく同性パートナー同士も含めることにしました。また、ウェブサイトにはLGBTに関する取り組みの表記を追加し、オフィス内には「誰でもトイレ」の設置をしました。

研修後、人事制度に同性パートナーを配偶者とみなすということを追加。このときは、研修の効果で経営層の理解があり、スピーディに意思決定がなされました。

それと、入社試験でのエントリーシートも変更しました。性別欄を「男」「女」「その他」にし、また面接官には、LGBTの方が面接に来ても不適切な言葉を発しないよう、対応を見直すように事前研修を行いました。

あとは、大きなところとしては「PRIDE指標※4」です。かつては応募すらしていなかったのですが、キャプランの担当者から「一過性で終わるのではなく、次のゴールとして『PRIDE指標』受賞を目指しましょう」と提案され、受賞に必要な施策事例を教えてもらいました。おかげさまで、2019年、2020年と2年連続でゴールドを受賞しました。

困っている人の気持ちに寄り添って活動し、制度を変えていく

社内で部員を集め、「色とりどりフレンドリー部」と題してLGBT ALLYの部活動も行っています。ゲイのミュージシャンの葛藤を描いた映画を皆で鑑賞し、感想を語り合ったときもありましたし、東京・新宿にあるセクシュアル・マイノリティに関する情報発信をする「プライドハウス東京」へ行きたいという話が出たり。最近、コロナ禍で集まることが困難な状況にありますが、だからこそ、今後はオンラインを活用して全国の支店スタッフも仲間にできると考えています。活動の輪が一層広がり、LGBTへの理解が深まると嬉しいです。

ちなみに、従来からあった相談窓口では性的指向や性自認に関することも新たに含めたのですが、まだ相談を受けたとは聞いていません。もしも、当事者がいるのにも関わらず、言い出せない雰囲気があるのなら、もっと啓発していかなくてはいけません。そして、会社として制度上変えられないという結論に至るのではなく、ダイバーシティ推進室で気づいていない課題を顕在化し、「だから、やらないといけない」と話すことが大切だと思っています。全社員にダイバーシティについて深く理解してもらうためにも、今後更に新たな取り組みにチャレンジしていきます。

※1:セクシュアル・マイノリティの総称。L=レズビアン(女性同性愛者)G=ゲイ(男性同性愛者)、B=バイセクシュアル(両性愛者)、T=トランスジェンダー(出生時に割り当てられた性と心の性に違和感や不一致感を持つ人)の頭文字から。
※2: LGBTを理解し支援する者のこと。
※3:クレジットカードを持つ方のご家族もクレジットカードを発行・利用できるサービス。
※4:職場におけるLGBTQなどのセクシュアル・マイノリティへの取り組みの評価指標。LGBTQのQはクエスチョニング(性的指向や性自認が揺れ動いている人、迷っている人)、クィア(規範的な性のあり方以外のセクシュアリティ)を示す。

株式会社オリエント コーポレーション 導入事例 概要

内容

LGBT研修

対象

経営層・全国支店長

経営層向け研修

LGBTをはじめとするセクシュアル・マイノリティに関する基礎知識や、世界・日本の各地で今まさに起こっている事象に加え、企業における取り組みや「PRIDE指標」、訴訟事例、炎上事例について学び、企業におけるLGBTへの取り組みの必要性や意義について研修を通して発信。

全国支店長向け研修

人事制度を利用するには上席の承認が必要。そのため、全支店長にLGBTの基礎知識、および当事者の困りごと、組織として取り組む必要性や意義を研修を通して発信。

<インタビュー:2020年12月/編集:2021年1月>

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