株式会社千葉銀行
女性活躍推進から始まる強くしなやかな組織づくり

「リテール・ベストバンク」グループを目指し、中期経営計画の一つの柱に「全ての職員が輝く働き方改革の実現」を掲げる千葉銀行。ダイバーシティ*推進を持続的成長のための経営戦略と位置づけ、その第一歩として、行員の4割を占める女性の活躍推進に積極的に取り組んでいます。今回のインタビューでは、ダイバーシティ推進部 部長の安孫子様、調査役の山本様に、女性活躍推進研修を導入した経緯や、実際の研修内容、受講者の意識の変化などについてお話をお伺いしました。

* 千葉銀行におけるダイバーシティとは 多様な人と人が連携し、お互いの持ち味を生かすことで、環境の変化に柔軟かつスピーディに対応していくことを指す。

株式会社千葉銀行について

株式会社千葉銀行

本社所在地

千葉県千葉市中央区千葉港1-2

設立

1943年3月

代表

取締役頭取 佐久間 英利

事業内容

普通銀行業務

千葉県を主要な営業基盤とする地方銀行。2016年12月末現在、預金残高11兆3,096億円、貸出金残高は9兆2,017億円で、日本の地方銀行で第2位の規模を誇る。千葉県内に160店舗を有し、東京都、埼玉県、茨城県、大阪府にも店舗を展開。海外6都市に支店、駐在員事務所を設置。
ダイバーシティ推進に積極的に取り組み、内閣府「平成27年度女性が輝く先進企業表彰」内閣総理大臣表彰および、経済産業省「ダイバーシティ経営企業100選」を受賞している。

株式会社千葉銀行
株式会社千葉銀行
最上位「えるぼし」認定
ダイバーシティ推進部 部長 安孫子様

トップのコミットメントと明確な目標を
一人ひとりに浸透させる人材育成

千葉銀行は、1986年に全国の銀行で初めて女性支店長を登用し、2005年には「女性いきいきキャリアアップ宣言」を策定するなど、早くから女性活躍推進に取り組んできました。

2014年11月には、全国の地方銀行64行が「輝く女性の活躍を加速する地銀頭取の会」を設立、その事務局を当行が務めています。こうした取り組みの背景には、頭取の佐久間の積極的なコミットメントと関わりがあります。ことあるごとに「女性活躍推進はPRや福利厚生のために行うものではなく、経営戦略の一環である」と行内外で発信し続けてきました。その考え方が少しずつ浸透し、女性が活躍することの重要性が管理職や行員一人ひとりに理解されつつあります。

また当行では、2020年度までにリーダー職(支店長代理など、部下を持つ立場)の女性比率を30%、管理職(支店長、部長など)の女性比率を20%とすることを目標としています。2016年7月現在、リーダー職は28%、管理職は9%となり、2005年の頃に比べれば比率は大幅に上昇しました。私自身も2店舗の支店長を経験し現職に就いており、その後も女性管理職の数が順調に増えつつあります。しかし、さらに女性が積極的に活躍するためには、登用だけでなく、意識や行動の変革も不可欠であり、人材育成の果たす役割は大きいと考えています。

女性の両立支援から中長期的なキャリア支援へ

千葉銀行では、2011年に仕事と育児の両立を実践してきた女性管理職をリーダーとする「女性活躍サポートチーム」を立ち上げました。産休取得前や育児休業明け、新しい分野に挑戦する女性などを対象に定期的に店舗で個別面談を行い、職場復帰やキャリアアップをサポートしてきました。この取り組みを強化するために、2014年に「ダイバーシティ推進部」が設立されました。

当初は仕事と家庭の両立支援をメインの活動としてきたこともあり、制度や環境は整ったと感じていますし、積極的な登用も進みつつあります。しかし、本来能力差がないはずの男女間でキャリアに対する意識のギャップがあったり、管理職になることに前向きになりきれない女性がまだいることは事実です。ますます女性のキャリアに対する意識改革を加速させていかなければなりませんし、上司が男女の行動特性を理解して、繰り返し女性部下の背中を押すといった配慮も必要です。そうした実践のためのサポートを、ダイバーシティ推進部が行っています。

単発の研修だけではモチベーションは向上しない

これまでも、若手や渉外担当者といった女性行員向けの研修を行ったり、これから管理職を目指す女性リーダー層と実際の女性管理職の意見交換会を年2回行ったりするなど、その都度対象者と内容を考えて取り組んできました。

こうした研修を行うと、その時は受講者の意欲がぐっと高まります。しかし、日常業務に戻り、上司からも特段のサポートがない状況だと、意識はすぐに元に戻ってしまう行員が多いということが課題になっており、単発で終わってしまう研修に限界を感じていました。

女性の活躍のためには上司の意識改革も必要

女性管理職候補を育成・登用していくためには、上司である管理職の側にも意識の変化が求められます。

ダイバーシティ推進部 調査役 山本様

重要性は理解できても、女性部下とどう接したらよいか、どう育成したらよいかがわからないという上司は少なくありません。また家事・育児にあまり携わっていない場合、ワーキングマザーの大変さや気持ちが身をもって理解できない部分もあるようです。そうしたことから「女性部下マネジメントブック」を作成し、女性行員と管理職の思っていることのギャップをQ&A形式で事例を出しながら示すなどの工夫をしてきました。このマネジメントブックが活用され、最終的にはマネジメントブックそのものが必要なくなるよう、道のりはまだまだ長いかもしれませんが、上司の意識改革にはさらに力を入れていきたいと思います。

株式会社千葉銀行 導入事例 概要

輝く女性応援ワークショップ

2015年度の概要を掲載。この取り組みをベースに2016年度も継続。

目的

2020年までにリーダー職の女性比率を30%、管理職の女性比率を20%を目標にし、その土台となる女性行員を育成する
(1)モチベーションの向上
(2)キャリアアップ意欲の醸成
(3)リーダーとしての具体的なスキルの習得

対象
  • 女性行員70名程度(リーダー職・係⻑職の2階層)

  • 女性行員の上司70名

期間

約半年間

  • 女性行員向け研修4日間+グループワーク

  • 上司向け研修半日間+女性部下の現場フォロー

輝く女性応援ワークショップ
輝く女性応援ワークショップ

上司が深くコミットする継続的な研修で
女性が活躍する風土づくりに貢献

女性活躍推進研修についてキャプランに相談したところ、女性行員だけでなく上司も深く関わる形で、単発で終わらない継続的な研修体系の導入を提案されました。従来、取り組んだことがない新しい内容で、当行の期待する効果が見込めたため、これを導入しました。

女性のキャリアに対する前向きな姿勢づくりを目的に、女性リーダー職および係長職、上司の3階層を対象とする「輝く女性応援ワークショップ」研修を約半年間かけて実施しました。女性行員向けの研修では普段の業務で経験できないことに取り組んでもらおうと考え、「働く女性が壁を乗り越えるために必要なこと」をテーマに、職場での自己目標を設定するほか、部署の異なる5~6人でグループを作り、行内外のロールモデルとなる女性にインタビューを実施しました。この研修の中で、上司には女性部下が取り組んでいる研修課題のサポート役を務めてもらいました。最後には、女性行員が課題や悩みを整理して発表・共有し、ともに具体策を考えることとしました。

集合研修の様子

研修に参加したことで得られる
大きな達成感と女性のキャリアに対する意識の変化

研修の対象となる女性リーダー職や係長職の階層は、ある程度仕事での経験を重ねて、業務のスキルも高い行員たちです。しかし、マネジメントについては手探りでやってきた面もあったと思います。ですから、研修を通じて体系立てた説明を受けることで「自分がやってきたことは間違いじゃなかった」「こういうふうに考えればよかったんだ」と頭の中を整理できたのはよかったという声も多く上がりました。

研修終了後のアンケートなどでは「自分のキャリアに対して前向きになれた」「今までは自分の仕事のことだけを見ていたが、視野が広がった」「達成感を得られた」という感想が多く寄せられています。

上司向けの研修でマネジメントの意識改革へつなげる

女性行員の活躍には、上司のサポートが重要です。このため、上司向けに女性部下のマネジメントに関する研修を行い、男女の行動特性を理解してもらうとともに、女性行員向けの研修で設定した職場での自己目標シートをベースに上司がコメントする機会も設けています。上司が関わりながら研修を進めることで、女性部下への接し方やマネジメントへの理解を深めるきっかけになるものと考えて、継続して行っています。

外部のロールモデルに接して、新たな気づきを得る

研修を通じて、パソナ*の女性管理職との意見交換会を実施できたことも、非常によい経験になりました。「他社の実態を知ることで、千葉銀行のよい面や不足している面が改めて見えた」という感想が多く寄せられました。

* キャプランと同じパソナグループ。株式会社パソナグループは日本経済新聞社 『2016年 人を活かす会社』調査 ダイバーシティ経営3位を取得。管理職に占める女性の割合49.0%、女性社員の出産後の復職率 100% (2016年5月末時点)。

また、2016年度の研修では、当行の女性社外取締役2名による講演を開催。外から見た千葉銀行の姿や、日本全体の女性活躍推進の状況を説明いただくとともに、ご自身がこれまでの経歴でどのようにキャリア形成と向き合ってきたかをお話しいただきました。内容に感銘を受けた受講者が多く、非常に効果的だったと思います。研修の外部講師だけでなく、さまざまな方のお話を組み合わせることによって、さらなる気づきを得る効果があったのではないでしょうか。

日常業務だけではできない人的ネットワークが生まれる

この研修は事前の準備が必要で、普段の業務と並行して進めるのは大変だったという声も多く寄せられました。しかし、あえて難しい課題に挑戦することで視野が広がったり、人間的な成長も得られたりするのではないかと考えています。

そうした成果の一つに、行内のネットワーク作りが挙げられます。部門横断型のグループで協力し合いながら一つのことを成し遂げることで、広く強い結びつきができたと感じます。また、研修を通じてリーダーシップを発揮したり、マネジメントやスキルアップについて実習したことが、今後プロジェクトチームに加わって仕事をしたり、職位が上がった際にも役立つものと思っています。

キャプランを選んだ理由

組織の問題解決につながる内容

これまで数々の研修を開催してきましたが、座学が多く、内容も業務に関連することが中心だったように思います。キャプランによる研修は、従来課題であった単発では終わらず、グループで一つの成果物を作るという点でこれまで開催した研修とは全く異なっていました。また、誰もが自分の意見を素直に発言し、それを受け止めてもらえる雰囲気があるのがとてもよいと感じています。グループで一つの成果物を作り上げたり、それをプレゼンテーションしたりする様子を見ていると、今後のキャリア形成に対する姿勢も変わってくるだろうと感じました。

ロールプレイングを講師が指導

柔軟な対応と幅広い提案力

研修内容を組み立てる際には、当行のニーズを踏まえて柔軟に対応していただいています。パソナの女性管理職の意見交換会など、バラエティに富んだ提案をいただいて、当行単独で行うよりも幅の広がるようなカリキュラムにしていただけているのは、非常にありがたいと思っています。これまでの研修でさまざまな効果が見えてきたので、今後はアプローチの仕方が年々変わると思います。そういった際にも、今後一緒に検討していただければと考えています。


 

女性活躍推進は、ポーズではなく
経営課題として捉えるべきもの

2016年に女性活躍推進法が施行され、日本では国家レベルで女性の活躍が重要なテーマとなっています。当行でも頭取以下、経営陣が「企業の競争力を上げるために女性の育成・登用を行う」という大前提に立っています。

女性の活躍推進を始めた当初は、どうしても摩擦が起きました。しかしここ数年で登用が増え、高い営業成績を上げたり、専門的な知識を持って営業できる女性も増えており、お客さまからも高い評価をいただくようになっています。

現在は女性の意見を取り入れるという段階ですが、この取り組みを進化させて、男女に関わらず意見を交わし合い、受け止め合い、新たな発想を生み出せる組織になるというのが理想型だと思います。

女性により長く、より活躍してもらえるようにサポートを

地方銀行は、地域社会全体を活性化させていくという役割を担っています。少子化が進む中で地方創生を実現するためには、女性活躍推進は非常に重要なポジションを占めていると思います。

かつて銀行では、女性は結婚したら退職をするという前提で採用・教育していた時代があったことは事実です。しかし現在は、新入行員の時から手をかけて人材育成を行い、10年、20年、30年と勤めて活躍し続けてもらいたいという思いがあります。研修はもちろん、女性行員を対象とした定期的な面談なども通じて細やかなフォローを行い、キャリアに不安を抱く原因となるものを早期に解消しながら、成長を支えていければと考えています。

 

また、「輝く女性の活躍を加速する地銀頭取の会」で運営している「地銀人材バンク」を活用すると、結婚や配偶者の転勤などの際、条件が合えば転居先近隣の地方銀行に転職することができます。経験豊富な女性が別の地方でも即戦力として活躍できれば地方創生に貢献できますし、介護やUターンなどのライフイベントを迎えても働き続けられる仕組みは今後ますますニーズが増すでしょう。このように業界全体でも女性活躍を支援しており、地銀人材バンクの事務局を務める当行としても、行内外でこの制度を積極的にPRしていきたいと思います。

一人ひとりの個性を尊重し、企業成長の原動力とするために

これからは女性の出産・育児はもちろん、高齢化社会の到来で介護を理由に仕事を継続することが困難な行員も増えてくるでしょう。女性だけが柔軟に働ければよいということではなく、男女を問わず働きがいのある職場づくりが求められていると思います。また、LGBT*や障がい者の方なども含め、一人ひとりが個性を認め合って、お互いに切磋琢磨し成長していけたらと考えています。

* LGBTとは性的少数者

 

当行では2014年に「ダイバーシティで 強く しなやかに~価値観の多様化で新たな発想を生み出そう~」をスローガンとしたダイバーシティ行動宣言を策定しています。女性活躍推進の取り組みはその第一歩。みんなが働きやすい職場を目指し、今後もさまざまな施策を展開していきたいと考えています。

<ダイバーシティ行動宣言とは>
2014年、女性活躍推進からダイバーシティ推進へとさらに 広げるため、シンボルマークとなるロゴを制定するととも に、「ダイバーシティで強くしなやかに~価値観の多様化で新たな発想を生み出そう~」をスローガンとしたダ イバーシティ行動宣言を策定

キャプラン取材後記

「女性活躍推進は経営戦略の一環である」というトップメッセージのもと、ダイバーシティ推進部を中心に全社を挙げて、女性が活躍し続けるための手厚いサポートに取り組んでいると感じました。

トップのコミットメント、上層部との意見交換、外部のロールモデルとの交流、上司のサポート、人的ネットワーク構築につながる研修、研修後の積極的な登用といった施策は、女性活躍推進の推進力になるとともに、女性のキャリアに対する前向きな姿勢や意識改革につながっていると感じました。一方で、規制力となりかねない転勤やライフイベント時のキャリアチェンジに対してもサポート施策があり、多面的なサポートが効果的に機能している好事例であると実感しました。

今後も、研修や異業種交流会をはじめとする取り組みを通して、ダイバーシティ推進を経営戦略として位置づける千葉銀行を、最大限支援してまいりたいと思います。

<インタビュー:2017年1月/編集:2017年3月>

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