女性社員を育てる最大の環境要因 管理職のマネジメントを変える
2016年4月「女性活躍推進法」が施行され、提出した行動計画の実行はまさにこれからが本番というときではないでしょうか。そこで、7~9月に「女性社員の意識改革」「管理職の意識改革」「働き方改革」と昨今の課題である「3つの改革」をテーマとした研修体験セミナーを3回シリーズで開催しました。今回は第2回「管理職の意識改革 -女性社員を育てる最大の環境要因 管理職のマネジメントを変える-」のセミナーレポートをお届けします。
あなたはイクボス?それとも旧来型のボス?
イクボスとは、自分と部下のワークライフバランスに配慮しつつ成果をあげられるデキるボスのことを指します。例えば仕事と育児、仕事と介護などの両立をしながら働くという時間制約のある社員をマネジメントすることが前提となってきている環境下では、管理職のマネジメントスタイルの変革が求められています。
しかしながら、女性部下との関わり方に自信が持てなかったり、頭を悩ませたりする経営層や管理職は多いようです。今回のセミナーでは昨今ブームになっているアドラー心理学をベースとした女性部下への関わり方、育て方を具体的なケースに基づきながら紹介しました。
共感ファースト、アドラー心理学を活用したマネジメントとは
アドラー式コミュニケーションの基本理論として、相互尊敬・相互信頼・協調精神・共感力/おもいやりの4つがあります。
例えばあなたが上司であるとして、育児と仕事を両立しながら働いているママ社員の部下との面談時を想定しましょう。アドラー式コミュニケーション術を活用し、聴き上手で共感を示す“共感ファースト”で関わり、そのうえで“ほめる”のではなく“勇気づけ”で接することが部下の自信とやる気の醸成に有効です。
ほめるという行為は上下関係を前提にした「上から目線」の行為で、信頼関係を構築しにくく、部下の自立を阻害する副作用があります。対して、「勇気づけ」は、部下が自分の力で困難を克服できるように支援する関わり方を言います。
ダメ出しではなくヨイ出しを
また、両立に苦戦しているママ社員に「育児と仕事の両立なんてやっぱり無理だね」「これだから子持ちは・・・」と上司がひとつの事象だけを見て決めつけてしまうことがありませんか?これは単純化や過度の一般化と言われ、部下への認知形成の基本的な誤りです。こうしたふとした一言が部下のやる気低下につながってしまいます。
誰にでも一発ではまるキラーワードはありませんが、日ごろから上司が部下にさりげない承認をすること、共感ファーストで接すること、ダメ出しではなくヨイ出しをすることなど、部下への関わり方のポイントを具体的に紹介しました。
イクボスを育てるための第一歩
質疑応答の場面ではご参加者から活発にご発言いただき、旧来型のマネジメントスタイルの管理職や組織全体を変えていくにはどうしたらいいか組織展開の苦労の声があがりました。
また、職場で起こりやすいケース、例えば時短勤務者の周りの社員の不満の声にどう対応するか、育休からの復職者との面談をどのように進めるかなどを活用したアドラー式イクボス育成プログラムの全体を受講してみたいなどの意見が出ました。
実践事例のご紹介
熊野講師×パソナキャリアママチーム
最後にはパソナでママ社員のみで結成した営業チーム:キャリアママチームの創成時の責任者であるパソナ矢野美紀子執行役員と熊野講師でイクボスについてディスカッションしました。
パソナグループは2016年5月末時点で女性社員比率が59%、女性管理職比率が約49%、育児休業からの復職率100%と女性が活躍するフィールドがあります。しかしながら、特に夕方から忙しくなりがちな営業の仕事を復職後も希望する人は少ない状況でした。
キャリアママチームは「時間制限のあるママでも、営業部で産休前と変わらぬパフォーマンスを発揮する会社にしたい」という思いのもと、2011年に創設されたパイロットチームで、働き方改革、ITツールの先行導入、メンバーの意識改革などの工夫で、4年後には、売上伸長率がTOP5に入る成果を出せるチームとなり、「残業なしでもパフォーマンスの高い仕事ができる」「ママ社員でも営業部に復帰するのが当たり前」という意識変革に貢献しました。(次の記事参照)
この意識変革の成功の背景には、やる気を引き出し新しい取組みを支援する上司の存在がありました。当時の上司は、チーム員を認め、まずはやってみようと応援してくれ、まさに“共感ファーストのイクボス”であったのではないかと熊野講師からコメントがありました。
<セミナー開催:2016年8月4日(木)>
講師 株式会社子育て支援代表取締役
熊野 英一氏
アドラー心理学に基づく「相互尊敬・相互信頼」のコミュニケーションを伝える〈親と上司の勇気づけ〉のプロフェッショナル。フランス・パリ生まれ。早稲田大学政経学部卒業。メルセデス・ベンツ日本にて人事部門に勤務後、米国インディアナ大学に留学(MBA/経営学修士)。イーライ・リリー米国本社及び日本法人を経て、保育サービスの株式会社コティに統括部長として入社。2007年、株式会社子育て支援を創業、代表取締役に就任。日本アドラー心理学会正会員。
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