「働き方改革、待ったなし!」の状態で、働き方改革に関するニュースを見ない日は、もはやなくなってきました。「働き方を変えよう」「残業を削減しよう」といったスローガンを掲げているものの、「何から手をつけていいか模索中」「意識はあるものの行動改革はこれから」という企業に向けて、企画側と実行側のそれぞれの推進におけるポイントと研修の一部をご体験いただけるセミナーをシリーズで開催しました。
働き方改革×長時間労働の是正について、第2回目は「職場」視点で改革を推進するポイントをテーマにセミナーレポートをお届けします。
定時退社の推奨ではなく、仕事のプロセスの見直しに重点を
働き方改革を進めるにあたり、よく「生産性向上」という言葉が聞かれますが、生産性には「労働生産性」と「人時生産性」の2種類があります。
「労働生産性」とは、社員1人が1年間で稼ぐ付加価値を指し、どれだけ資源を抑えて多くの成果を生み出せるかということです。そのため、無駄な業務に費やす時間が多ければ多いほど、生産性が下がってしまいます。
「人時生産性」とは、社員1人あたりの1時間の平均売上を指します。
日本生産性本部「日本の生産性の動向2014年版」のデータによると、1955年は4,083円であったのに対して、2013年は4,372円と7%上昇しており、生産性が向上していることがわかります。しかし、ここ半世紀でのITやロボットなどの技術普及を考慮すると、決して高いとはいえない数字です。また、2つの生産性とも現在の日本は他の先進国と比較すると劣っているのが実情です。
「生産性が高い」というのは、より少ない資源(人・物・金・時間)で多くの成果(売上・利益)を実現することです。生産性の高い会社とは、少人数でお金と時間をかけずに、売上と利益を実現できる会社になり、反対に生産性が低い会社は、同程度の売上や利益でも残業が多く、人件費の割合が増え、高コスト体質になっています。
生産性を上げようと残業時間を削減し、定時退社を推奨する会社も数多くありますが、「生産性が高い=定時退社」とはなりません。本来は仕事のプロセスの見直しによる無駄な業務の削減に重点を置くべきなのです。また、削減した時間で、成長を加速させるための施策を行うことも不可欠です。
残業時間ゼロベースの発想が生産性向上につながる
社員一人一人の残業に対する意識は、残業時間削減にあたって非常に重要であり、それぞれ異なるのが実情です。残業は、業務を遂行するために定時以降の自分の時間を使うため、マイナスに捉われがちですが、なかには「残業で収入を増やす」ことをメリットと感じ、自ら残業を選択している社員がいるかもしれません。会社として残業時間を削減するだけでなく、同時に減らした残業代をいかにキックバックする社内制度を見直す必要もあります。
そうした上で残業時間を削減するには、残業時間ゼロベースへ意識のベクトルを変えることが大切です。残業ありきの「あと〇時間ある」発想をやめて「毎日8時間しかない」に切り替えてみましょう。残業時間ゼロの定時退社を目標にすれば、限られた時間内での業務遂行と効率化を意識し、仕事をコントロールできる能力が培われるのです。
さらには、鍵となる管理職が残業ゼロベースを意識し行動することで、部下だけでなく上層部へと浸透していきます。
そうしたことにより、社内全体に定時退社の意識が芽生え、仕事の効率がアップし、組織の意識改革が推進されます。
成果をあげるための時間の使い方:仕事と時間の見える化
仕事の時間は、いくつかの時間に分けられます。
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ビジネスの成長を「生み出す時間」
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ルーチンワークなどを「処理する時間」
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未来への「投資の時間」
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浪費となっている「無駄な時間」
時間配分は、管理職・一般社員などの立場・役割、研究開発・営業・管理部門などの職種によって異なります。普段、自分がどのように業務の時間を使っているのか分析することで「仕事と時間の見える化」ができます。
分析を始めると、実は人によって時間の捉え方が様々で、会議の時間を他部門との連携しビジネスを創造するための「投資の時間」と捉える人もいれば、「無駄な時間」と捉える人もいます。社員同士の雑談を「無駄な時間」と捉える人もいれば、本業の仕事をスムーズに行うために必要不可欠な「生み出す時間」と考えている人もいるのです。実際にセミナー中に複数のグループでディスカッションをしましたが、人と自分の業務の捉え方に違いがあり、驚きの声があがりました。
管理職がこの手法をチーム内で活用し、チーム内の仕事を見える化→仕事のプロセスの見直し→定期的にチェックすることで、無駄な業務や時間を減らすことができます。
未来への投資の時間については、世界トップクラスの企業でも採用されています。例えば、Google社や3M社は業務時間の20%を自分の好きな時間に使えるようにしています。ただ、好きなことといっても目的を持って取り組むことが求められており、単純に自分の趣味をするというわけではありません。「目的を持たせる」という制約が価値あるものを生み出しています。会社として給与を払ってこの20%の時間を確保するというのは、世界のトップ企業として新しいことを日々生み出すことが求められる企業だからこそかもしれません。
また、急な対応が迫られるマネージャーは、常に30%の余裕の時間を設け、意思決定やトラブル対応などに備える必要があるでしょう。結婚や出産などライフステージの変化により、働き方を変えざるをえない状況の場合は、25%の余裕の時間を設けるなど、立場や役割、自分が置かれている状況に応じて、仕事と時間を自らコントロールすることが重要です。
< 写真左 > 株式会社パソナ リンクワークスタイル推進統括 シニアマネージャー 湯田 健一郎 氏
秋山講師のセミナー終了後、湯田氏による「テレワーク導入による働き方改革」に関するミニセミナーを開催しました
キャプランセミナー事務局より
残業ゼロベースの意識と仕事の見える化で第一歩を
グローバル企業でタイムマネジメントを実践してきた秋山講師の経験をベースに職場で実践できるタイムマネジメントのコツをご紹介しました。
残業ゼロベースの意識を持つこと、そして自分および職場全体の時間がどのように使われているかを見える化することが、職場の生産性を上げる第一歩となります。
まずは、ご自身の1週間の仕事振り返ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。生み出す時間として新たな生産性向上のアイデアが出るかもしれません。
<セミナー開催:2017年2月10日(金)>
講師 株式会社Leonessa 代表取締役社長
経営コンサルタント
秋山 ゆかり氏
イリノイ州立大学在学中に新規事業を立ち上げ、インターネット・エンジニアのキャリアを重ねる。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の戦略コンサルタント、GE Internationalの戦略・事業開発本部長、日本IBMの事業開発部長等を歴任。独立後は事業開発やグローバル人材育成を支援。女性活躍推進では、理系女性社員の支援に強み。日経ビジネスオンライン「秋山ゆかりの女性キャリアアップ論」がアクセス数1位になる等 人気の記事を連載中。
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